0008  夏の沢(水長沢〜平が岳〜恋ノ岐川)

芝田 之克

メンバー:高尾文雄、山森晴之、芝田誠通、芝田之克

812 東京6:407:37高崎7:448:48水上=(タクシー8320円)八木沢ダム

=(船・高柳氏・25000円)−11:30水長沢出合−文殊沢出合(18:000

813   8:00発−平が岳頂上(17:00

814   8:00発−恋ノ岐川−オホコ沢出合(16:00

815   8:30発−恋ノ岐橋(15:00)−銀山平−小出(タクシー7640円)19:58

20:38越後湯沢20:5222:16東京

 

私にとっては阪大ワンゲルの27年前の夏合宿以来ぶりの懐かしい平が岳、あの南会津の強烈な暑さの中でのブッシュ、そして、一転して天国のように美しい平が岳の休養日は忘れられない。平が岳は遠くて遠い山であり、春夏の機会にもなかなか行くことにはならなかった。今回、水長沢と恋ノ岐を結ぶことで、すばらしい夏の沢の計画となった。沢を下りに使うのは、今回が始めてであったが、幸い恋ノ岐の傾斜は緩く人にやさしい沢であった。

812、朝は、東京駅の乗換え時間が25分あったので、切符は東京駅で買うことにしたが、何とどの列も早朝にもかかわらず20人以上並んでいる。6:40の新幹線には、3分前にようやく乗れた。自由席の場合は、自動販売機もあるが、基本的には事前に購入しておくことが必要である。高尾君は、大宮駅から乗ってきたが、私と高尾君は立席で高崎まで行くことになった。

9時前に水上に着くと、山森君は、「きたぐに」から新幹線−バスと乗り継いで、ちょうど9時にはやって来た。タクシー40分で八木沢ダム、そこから高柳氏のボートに乗せてもらって40分で、奥利根湖の最奥部に着く。8年前に、利根川本谷をやった時は、水面が低く、出合までかなり歩く必要があったが、今回は満水状態で出合のすぐ手前まで船で入れた。

高柳氏の年齢は30歳台後半、群馬県の代表に選ばれるライフルの名手のようで、今も毎年のように熊や鹿を仕留めているそうである。ボート屋の看板は上げているが、狩猟と釣りと山菜取りで生活しているとのこと。話好きな人で、いろいろと話を聞かせてもらった。「ところで何が、面白くて山に登るのか?」と聞かれたので、「原始のにおい(雰囲気)です。」と答えた。

出合から、魚影が濃いので竿を出してみるとウグイであった。2匹釣ったが、先で岩魚が釣れることを信じて開放した。3時ごろから雨になり、急激に増水してきた。何とかテントを張れるところで、大休止にしたが5時になっても雨が止まない。下見に行くと、二股に良いテン場があり、先行パーティが居た。台風が来る恐れもあり、我々もそこで泊まることにした。沢は濁流になっており、とても釣どころではなかった。雨は止んできたが、なかなか火がつかず、すぐ上が雪渓のため、冷気で霧状態のなか、真暗になってからの食事になった。それでも10時頃までたき火の前でフルート演奏を楽しんだ。

813平が岳までの登りでは、2回ザイルを出した。1回は、高巻きから雪渓に降りるところで、もう1回は激流の3m滝の突破で、ザイルをフィックスして荷物を上げた。源流部にはブッシュはなかったが、草付の登りは歩きにくかった。いつものように最後の登りはバテてしまう。平が岳の頂上は、ブッシュに囲まれた良いテン場になっていた。他にも池の岳の水場に4パーティほどいたようである。夜は、ガスであったが、無風状態で静かであった。

81410時頃まで頂上でぶらぶらする。この頂上の湿原は、創りが細やかで、日本庭園的繊細さがある。湿原に点在するはい松の盆栽的形状、水草の外囲を取り巻く新芽の色合いの美しさが印象的であった。さすが百名山の一つである。最初はガスっていたが、10時頃になるとようやく晴れてきた。なかなか幻想的なひとときであった。

恋ノ岐川からは、3パーティが上がってきた。源流部もなだらかで、岩魚の隠れ処になる岩や木が多く、いかにも岩魚が生息しやすそうな沢である。1700m付近からチビッコ岩魚を多く見かける。1600m付近の釜で誠通が、釣り糸を垂れると、立て続けに20cmクラス2匹が釣れる。卵を抱えたメスであった。もう産卵しているのであろうか?続けて山森君も私も釣るが、同じ釜では、どんどん小さくなる。場所を変えるとどこでも釣れる感じであるため、25cm以下は放流する方針で下っていった。オホコ沢に着く頃には、25cmクラス2匹を含めて6匹を確保していたが、今度は、全く当りがなくなってしまった。このあたりまでは、下から1日で来られるため、全て釣られているのであろう。こんなことなら、もう少し確保しておくべきであった。

オホコ沢出合のテン場は、良いところであるが、薪が全然ない。この日も、1時間ほど夕立になり、濡れてしまった薪に火を付けるのに苦労した。6匹の岩魚は、あらかじめ塩をして運んでいたので、水分はよく切れており、艶のある焼き具合と、歯ごたえのある、締まった身の味は忘れられない。

815、朝一に、釣り糸を垂れるもあたりなし。途中で、2名の釣り人に会うが、4:30から釣って数匹とのこと、去年はいっぱい釣れたのにとぼやいていた。釣り人が入ると岩魚はすぐにほとんど釣られてしまうのであろうと思われる。でも、この沢は、長い源流部が、豊富な岩魚を供給しているのだろう。傾斜が緩く、ルートファインディングで人を裏切らないのは良いが、実に長い。股ズレと左ひざの故障で、後半またしてもどんどん後れをとってしまう。

15:00に橋に到着するも、船の時間に間に合いそうにもなく、ヒッチを試みる。幸い、ダム建設に来ている人に拾ってもらい、私一人は、銀山平まで乗せてもらう。銀山平で小出からタクシーを呼ぶ作戦であったが、途中でタクシーがきたので、飛び出して止まってもらう。何と恋の又川を遡行する客を一人乗せていた。3名のピックアップを頼み、銀山平で土産を買って待つこと1時間。みんなと合流して、18:00前には小出に着いた。結局、予定どおり船で行くよりは早く小出に着いたことになる。小出の駅前の焼き鳥屋は、安くてうまいお勧めの店であった。

                                                                                 以上