越後駒ケ岳 水無川 北沢遡行報告
高尾文雄
御月山沢出合い付近に架かる雪渓
関門の滝
幣の滝
北沢の大滝をテント地から見上げる
稜線まで続くスラブ(一泊目の天場から北沢を見下ろす)
北沢の大滝2
スラブと紅葉
北沢の二俣から左俣を見上げる
高巻き途中から左俣を見下ろす
わずかな河原状から見えたグシガハナ
上部二俣から右俣を見上げる
2002年10月11日〜14日
メンバー:高尾、森(JAC青年部)
かねてから念願であった北沢に行く機会を得、絶好の天気にも恵まれ遡行することが出来た。12年前の秋に芝田君、家の妻らと快晴のもと越後三山を縦走したときに見た北沢が忘れられなくて、いつかは行こうと思いながらなかなか行けなかった。今回素晴らしいパートナーに知り合い、行くことが出来た。
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10月11日(金)夜〜10月12日(土) 天気:快晴
喜多見21:18〜21:30千歳船橋21:35〜1:40水無川キャンプ場(仮眠・朝食)6:20〜6:30高倉沢出合P6:50〜7:40入渓点8:05〜8:40デトノアイソメ9:05〜9:40御月山沢出合下10:10〜12:45西沢出合13:00〜14:30関門の滝15:10〜17:20真沢出合 BP
高倉沢出合い近くに車を止めて準備をしていると、もう一台車がやってきて沢屋さん3名が降りてきた。やはり北沢に行くらしい。彼らはさっさと準備を終え出発して行った。我々も準備を終え林道を歩き出す。堰堤工事の横から登山道に入り、デトノアイソメを目指す。途中から沢に下り、河原を行く。別のパーティーが追いつき抜かされた。彼ら3名は真沢に行くとのこと。
天気は快晴、周りの山の高いところはきれいに紅葉している。御月山沢出合いの手前でクレバスのようなゴルジュとなり、奥に滝が掛かり行く手を阻まれた。左岸のルンゼを使って高巻く。踏み跡がしっかりしている。ルンゼからブッシュ帯へ移り、上がり気味にトラバースする。しばらくすると懸垂の支点が出てきた。先を見ると御月山沢のスラブが現れた。短い懸垂下降をし、トラバース。さらにもう一度の懸垂下降で御月山沢に出る。スラブを横切り、上がり気味にトラバースを続ける。すぐ先のルンゼから降りられそうなので偵察するが、沢身はゴルジュで手が付けられそうにない。リングボルト一本で懸垂下降した跡があった。さらにトラバースして行くとルンゼの手前の小さなリッジを利用してクライムダウンで沢身に降りた。遡行記録では別の場所を25mの懸垂下降で降りている。
沢はおとなしくなっていて、西沢出合いまでは問題なし。西沢出合いから再びゴルジュとなり、先に関門の滝が見える。右岸を高く巻く。高く巻き過ぎと思い途中で下り気味にトラバースした。すると草付きスラブに出た。ブッシュピンで懸垂下降をしたが、下の沢が通行不能とわかり取りやめ。ブッシュはかなり高いところにしかない。仕方なく草付のトラバースで関門の滝のすぐ上まで行く。ブッシュピンがあり捨て縄が何本も残置してある。50mザイルをつないで懸垂下降。降りたところが関門の滝の取り付きであった。
関門の滝は右岸の緩いフェースを簡単に登れる。ただし高度感があり、ザイルを付けた。50m2ピッチでさらに上の滝の落ち口まで行った。落ち口で左岸に渡り小さな滝を登るが、ホールドが細かい。残置ハーケンに助けられ登る。すぐに水流に戻らないと行けないが、一歩が出せず、左岸の逆層スラブを高巻く。
沢身は滝が連続し始め、高巻きを続ける。左岸に岩峰があり、垂直の藪コギが出てくる。しばらく上がって、トラバースに移る。適当なところで沢見へ降りようと懸垂ピンを探し、下降しようとしたが、沢は滝と淵で降りられず、途中で切って、スラブをトラバースする。先には100mほどの滑滝が見え、その先で真沢と北沢に別れている。真沢の幣ノ滝150mと北沢の大滝100mも正面に見え圧巻である。前の2パーティーは分岐の右岸にあるビバークポイントにすでに着いていた。トラバースして行くとブッシュピンがありそれを支点に50mの懸垂下降で沢見に降り立った。
暗くなるので急いで100mの滑滝を左岸から登り、滝上を右岸に渡り、岩棚のようなところでツエルトをかぶってビバークした。薪はない。ポールになるような木もない。上の2パーティーの天場はいいようだ。テントを張ったり、ターフを張ったりしている。
しかしすぐ下には100mの滑滝があり、幣ノ滝150mと大滝100mに囲まれ、そのまた後には稜線近くまで続く数百メーターの圧倒的なスラブが見えるテントサイトなんて初めてだ。
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10月13日(日) 天気:晴れ
真沢出合7:35〜9:35二股9:50〜11:05河原上入口11:30〜15:00奥の二股15:15〜16:30源頭
他の2パーティーとほぼ同じ頃出発。真沢は幣の滝が立派である。何本にも分かれた滑滝となっているが、スッキリしていて登り応えがありそうだ。北沢の100mの大滝を下は右岸から、途中の段で左岸に移り登る。すぐ上の滝は左岸を登り、そこからは左岸のスラブをトラバース気味に高巻く。最後はブッシュに突っ込み、小尾根を越える。越えた所から再びスラブをトラバースし、沢身へ降りた。降りたところが二俣である。
左俣に入り滝が連続して出てくる。右岸から巻き始める。ブッシュ伝いに行くと高く追い上げられてしまうので、スラブとのコンタクトから先を見て、連爆帯の終了地点を目指してトラバースを開始した。途中で草付きスラブとなるが、わずかにバンド状になっている。8m滝のすぐ上にブッシュピンを使い懸垂下降し沢に戻った。ここは上から見ると怪しかったので懸垂下降したが、下から見ると草付き伝いでも下降できた。
水流沿いに小滝を登っていくと、すごく水が冷たい。上流部の雪渓地帯が近いようだ。小さなゴルジュを左岸のスラブ帯から低く巻くと、沢は急に開けて河原状になり水際まで日が射し込む。錦の衣を纏ったようなグシガハナが正面に見える。少しのんびりする。
それもつかの間、すぐに深く切れ込んだ箱状の谷になり、大きく長い雪渓が次々に現れた。安定しているようなので潜って行くが、つい最近崩れたと思われるブロックが散乱し始めた。これ以上潜るのは危険と判断し、右岸側の側壁に這い上がる。滝になって合流しているルンゼに岩壁を右からトラバースして入り、ルンゼをしばらく登って、傾斜が緩くなったところから右へトラバースを開始した。このルンゼを使って本流から離れてグシガハナまで登って終わりにする手もあったが、時間もあり、天気も良いので源流まで行くことにした。また、ここまでほとんど高巻きに時間を費やしていて沢の水際を登っていないので、これで終わると欲求不満でもあった。
どんどんトラバースするが下の雪渓も続いていて降りられない。やがてルンゼがありそれを使って下降すると雪渓の先まで見えた。ルンゼの下降途中から再びブッシュを使ってトラバースを始める。すぐに草付きスラブとなる。そこを更にトラバースし、ブッシュピンを見つけて45mの懸垂下降で沢身に戻った。降りたところは雪渓が崩壊した残骸のブロックだらけのところであった。
雪渓はここで終わっており、ここから上流は小滝登りで高度を上げていく。しかし両岸は高くスラブで囲まれている。チョックストン滝でも出てきて行き詰ると大変な所だが、幸い水流通しでザック吊り上げなどして何とか登っていけた。
正面にルンゼが出て、それを分けて左に大きく曲がると直登不可能な滝に出た。右に大きな岩峰がある。その壁を右から登り、急な草付きスラブを左にトラバースして小さなリッジを乗り越して沢に戻った。高度感があり緊張した。
すぐに右から多段の滑滝に出合う。ザイルを張って左岸のフェースをまっすぐ上に登る。フェースから傾斜のないヌルヌルの滑滝を上がると終了。その上はきれいな滑がしばらく続いていてやっと悪場はなくなった。両岸も低く開けて、草原になっている。
がらがらの涸れ沢を均したが、まだゴツゴツした狭い段にツエルトを張って寝た。夕焼けが紅葉を真っ赤に染めて大変きれいな景色であった。
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10月14日(月) 天気:霧のち晴れ
源頭7:30〜8:05稜線8:25〜8:40越後駒ヶ岳8:44〜8:50クシガハナ分岐8:54〜9:17クシガハナ9:26〜11:04雪見松11:35〜12:05林道12:07〜12:25高倉沢出合P12:35〜12:50六日町14:50〜15:15湯沢16:15〜19:32喜多見
朝はガスで何も見えない。源頭から草付きをどんどん登る。やがて笹薮となり、しばらく藪をコグと稜線の登山道に出た。ガスで何も見えない越後駒の頂上を往復し、グシガハナへの急な登山道を下る。途中で晴れ出し、周りのすごいスラブに感嘆しながら下った。次は真沢かオツルミズに行きたい。
以上