70歳代の6千米
安田隆彦(58年入部 71歳)
山選び:キリマンジェロで5千米を登ったら次は6千米に挑戦したくなった。
ネパールにはトレッキングピークとして65百米以下の山が33座あり選択幅が広い。高所で岩登りのない所、普通の人より3割方のろいので最終キャンプから9時間くらいで登頂して帰れるところでないと暗くなって危険と思い探したところ メラピーク(6461m)が浮上した。リーダーに泉谷洋光(64年入部 65歳 イッセキ)が参加してくれ実現の運びになった。
準備山行:1年の間に月2回のペースで準備登山が計画された。しかし実現したのはその三分の一。60歳代の頃は体のどこかが痛いというのが普通であったが、70歳代になると痛いところがいつも複数個所現れる。体にはこんなにたくさん痛くなるところがあると感心するばかり。整形科ではレントゲンを撮って 痛み止めの薬をくれるだけなので対策にならない。もっぱら整体師的東洋療法に頼りながら 痛さをこらえたり 避けたりしながらのトレーニング、パラリンピックの選手の気概で体力向上に勤めた。
高度順応:第一回目の高所登山ではダイアモックスを使用したが下痢で悩まされた。2回目は漢方薬柴苓湯を使用したがやはり下痢。今回は中島道郎医師の言う ゆっくり歩いて登れば薬の必要はない、テントに入るのは少し高いところに登ってからにすると良い の助言に従った。泉谷は有名な遅速登攀者、その上草花の観察に道草し、句帳を取り出して思いついた俳句をメモするなどゆっくり登山の代表なので高所キャンプ(5800m)に入ったときは2人共万全、食欲も旺盛であった。しかし良く見えたのは呼吸器系統から胃袋までで、私の腸は酸素供給量が少しでも減るとすぐストライキを起こす。最初から最後まで下痢に悩まされた。不思議なことにそれからくる体力減退がほんの僅かであったのは幸いだった。腸で栄養を吸収した後、最後の固結段階機能だけが低下するのではないかと推測している。
エージェント:昨年一度使ったAdventure Pilgrims Trekking社を引き続き採用、誠意を持って対応してくれた。
費用 :普通のメラピーク登山は16日間だが 3日間の余備日を余分に加えて入山19日間、日本発ベースで23日間 2人の客に対してシェルパ、ポーター総勢9名
飛行機代 12万円、エージェント費2700ドル(含チップ)、雑費 3万円 合計約40万円
海外登山保険:日本山岳協会山岳共済会の個人加入で申請した。AACK経由と比べると国内登山の場合 費用は変わらないが海外になると大いに高くなると聞いていたが、現実はほぼ同じであった。違いはAACKの場合は2~3ヶ月前には詳細計画を出さねばならないが、個人加入の場合は1ヶ月以上前に出さない、計画は日数と目的山名の記入程度で済む。
保険料金
チュルーウエスト (AACK経由) 31日間 7,300円
メラピーク (個人申請) 23日間 6,160円
入山:今年は モンスーン明けが遅れ 入山までに現地調達資材がそろわず1日ロス。歩き始めて直ぐに谷の増水で渡れず1日ロス、ベースキャンプまでの日程を1日余分に掛けたため 予備日3日間を使い果たしてアッタク日の余裕がなくなった。
最高到達点:アッタク日には登山基地Khareまで帰着する時間を考慮して9時までの登攀とした。午前1時に月光の中を歩き始め 膝までのラッセルを楽しみながら 茜色に染まりくるヒマラヤ大パノラマを堪能した。太陽が出始める瞬間 6千米の三角鋭鋒が全山金色の光背に輝く 驚くような現象も見られた。頂上まで高度にしてあと200m、6200mの所で時間切れとなり 迷うことなく踵を返した。
結:一番ヒマラヤの美しく見えるルートとして その名に恥じぬ素晴らしさだった。
六千米台にも踏み込めた。先はまだまだある。
地図1
ルクラからKhare登山開始基地(メラピーク街道):
ルクラから東に歩、Zatrwa峠を越えてヒンクー谷に入り、遡上してKhareに至る
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氷河湖Sabaiの決壊口、被害ほとんどなし
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決壊の下流部分、下流ほど被害が大きい
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Tangnagの紅葉
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Khareにて 左泉谷、右安田 バックはメラピーク
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マカルー
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筆者 メラ峠にて
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メラ峠よりピークを見る。左中央部2つある岩山に高所キャンプ、
その右に見える雪稜の左側を抜けて中央丸い突起状のピークを目指す。 |
以下行動記録を記す。
2010年9月15日(水)曇り
9月16日(木)曇り カトマンズ 気温21度 1500m
9月17日(金)曇り カトマンズ→Lukla 2840m 16度
9月18日(土)晴れのち小雨 Lukla 朝 10度
11:05 ルクラ発 2840m
14:00 3135m 谷川に阻まれテント張る
9月19日(日)晴れのち小雨 10度
テント地発 8:45 渡渉完了 9:05
Chutanga 11:25 3020m
Kharkteng 3:45 3670m
9月20日(月)晴れのち小雨 4度
Kharkteng 8時発
Zatrwa La 11:40 4610m
Thuli Kharka 13:10 4300m
9月21日(火)曇りのち小雨 5度
8:20 Thuli Kharka発
12:00 Big Boulder
12:40 Taktor (地図上View Point)4020m
9月22日(水)雨 10度
Taktor 8:35
Mosom Kharka 10:35 3691m (本谷合流点)
Kote 12:20 4182m
9月23日(木)曇り時々雨 8度
Kote 8:10 発
Tangnag 3:30 4356m
9月24日(金)曇り 4度 休養日
9月25日(土)快晴 2度
8:30 Tangnag 発
11:20 Dick Karka 4659m
1:35 Khare 5045m
9月26日(日)快晴 マイナス1度 休養日
9月27日(月)快晴 マイナス4度
8:35 Khare 発
11:50 5400m 雪渓下 靴履き替え
14:45 Mela 峠 着
15:05 テント地 着 5350m 夕刻マイナス3度
9月28日(火) 快晴 マイナス7度
8:10 メラ峠発
2:00 高所キャンプ地着 5780m
2:40 高所順応 5805mまで
9月29日(水)快晴 マイナス4度
1:00 キャンプ地発
9:00 6205m 引き返し地点
10:35 高所キャンプ着
16:20 Khare着
9月30日(木)快晴 マイナス4度
9:00 Khare発
12:45 Tangnag着
10月1日(金)霧 6度
8:15 Tangnag 発
13:15 Kote
15:30 Mosom Karka
17:25 Tacktore
10月2日(土)曇り 4度
8:15 Tacktor発
14:00 Thuli Kharka 4300m
10月3日(日)早朝快晴後ガス 2度
8:10 Thuli Kharka 発
10:25 Zatrwa La 4610m
13:00 Karka Tang 4130m
16:00 Chutanga 3020m
16:30 テント地 2860m
10月4日(月)快晴 5度
7:50 テント地発
11:05 ルクラ着
10月5日(火)快晴 10度 ルクラ→カトマンズ帰着
10月6日(水) 快晴
CX6705 10:15pm カトマンズ発
10月7日(木)曇り
CX504 2:35pm 成田着
以上。