2000年5月2日〜5日

原田A と 山本サンペイ

5月2日

今年の連休は急に思い立って月山に出かけた。関空を昼前にでて庄内空港経由で

夕方月山の麓の温泉に着く。

天気予報の通り曇り。山菜料理と酒と風呂。

 3日

朝、旅館の車でリフトの下まで送ってもらう。

それほど大勢でもなく少なくもないスキーヤー、ボーダーと一緒にリフトで姥が岳の麓に着く。

視界は20−30mだったが、数名の先行パーティがいたので後を追い出発、月山をめざす。

30分ほどで先行パーティに追いつくが、彼らはここから引き返すという。

相変わらず視界が悪く、加えて3日前に降った雪が真っ白で斜面が見分けにくい。

いつでも引き返すつもりで頑張ってみることにする。

腰からスキーを引っ張り、ズッポで進む。10−20mごとに後ろから方向を指示、

地図と磁石と高度計とにらめっこを繰り返す。踏み後はない。

小一時間で尾根らしいところにでて這い松が見え白以外の色彩を初めてみる。

しばらくは尾根沿いで夏道の痕跡もあったが、1時間も進むと又大斜面にでたらしく

再び白一色の世界。所々にかすかにわっぱの跡がある。登りも急になる。

大方3時間になろうかという時、突然目の前に黒いものが見えた。うれしい。

避難小屋が、吹き飛ばないようにロープで尾根に縛り付けてある。

しばらく進むと小屋の屋根が一部を覗かせている所にでた。

ここからは方向転換、北を目指し神社に向かう。このあたり平坦部で視界は悪く

益々慎重に進む。しばらくして神社の鳥居が足下に表れた。ついでに鳥居を2つ通り越して

3角点を目指すが雪の下でよくわからない。それ以上進むと下りになるところから引き返し、

神社の少し露出している屋根の陰で乾杯。気温が低く手の感覚がなくなりそうな位である。

風も強い。


避難小屋まではシールで進み斜面の直前でとる。

これからは自分の踏み跡だけが頼り。視界から絶対出ないようにしようと繰り返しスタート。

踏み跡をポールに見立てて左右に縫うように曲がる。幸い後続は5mと離れずに付いてきてくれる。

視界のことを除けば快適なスキーである。完ぺきに踏み跡沿いにターンを繰り返し急斜面が終わる。

少しくたびれながら、踏み跡の真上を長いトラバースを続けていくとどこかで人の声がする。

「そちらへ進もうかと」と言って進むと目の前にリフトの終点が表れた。

結局この日月山に登ったのは我々だけであった。

当然夜は乾杯、乾杯。

ガスの中の月山頂上
月山神社は屋根の一部が露出している
4日

幸か不幸か外は雨、強くはないが当然沈殿。思い切り遅寝して風呂、そば、酒。

泊まった民宿の横に思い切り古いそば屋がある。そこの月山山菜そばがうまい。

宿の孫娘はスキー選手でかわいく、愛想も良い看板娘である。


5日

今日は早出して7時半にリフト下、姥が岳のロープトウはまだ動いていない。

やはりスキーを引っ張り1時間弱で頂上。月山を目指すパーティーが2−3組進むか退くか

悩んでいる。視界は昨日よりちょっぴりましかなと言う程度で20−30m。

今日は出だしはスキーである。

昨日にもまして慎重に方向、地図、高度の確認。進む方向に這い松があってもとにかく

決めた方向に直進。

だがほとんどは、晴れていればよだれが出そうな斜面である。

ホワイトアウトのスキーの難しさを実感する。だが途中からはなれてきた。

小一時間でコルらしい地形の所に出る。あわてず食事。まわりを慎重に吟味して方向を決める。

少しで予想通り登りとなり、尾根で方向が決めやすくなる。

小一時間で目指す湯殿山の頂上とおぼしき所に出た。

またしても乾杯。かすかに何日か前のワッパの踏み跡がある。

なをもスキーを引っ張りながら最高点を目指す。ゴジラ落としが多くしばしば腰近くまで落ちる。

やがて最高点、ここから左を向いて下降。幸いなことに反対側から今朝登ったパーティがある。

視界も少しましになってきて、ややスピードがだせる。

それからは夢の世界であった。

上部のクレバスを越すと、斜度のある広い斜面。

トレースをはずさず大回転を続ける。私たちだけの雪面が続き、

私にはこれまで滑ったどの斜面にも勝ると思われた。

だがもしガスが晴れていて下まで見通せたら、少しビビっていたかもしれなかった。

急斜面が終わると緩やかなブナの原生林地帯を谷沿いに下り、やがて

1時間半ほどで滑走が終わる。

湯殿山山頂ガスは昨日より少しましややガスの晴れてきた湯殿山を滑る 大斜面が終わり木が現れる。

バス道沿いに宿に着いた頃から、晴れてきた。

はじめて全山が見える。まるでクイズの正解を示すように。

でももはや正解を目でたどる気はなかった。

少し前に病気を体験した62才と、いくらも年が違わぬ二人がガスの中を

少なからぬ不安とたたかいながら、慎重にルートをたどり、登り降りてきたのだ。


宿から仰ぐ出羽三山 反対側の朝日連峰

山行を終えて、私は滅多にない感激を味わっていた。

どうしてなのか自分でも分からないところがある。

が思うに、私の山登りはその山登りでなにを体験したかが重要なのだ。

百名山を登るのが流行っているらしい。常々私はこれを苦々しく思っている。

出来れば百名山以外の山を登る会を作りたいぐらいのものだ。

月山の頂上も、湯殿の頂上も関係ない。

人によればたかが月山で大騒ぎするな、と言うかもしれない。

あのガスの中を登るのは無謀だとの批判もあるかもしれない。

しかい、私はここしばらくで最高のスキー登山が出来たと思っている。

 

泊まった宿 
     志津温泉  つたや
     志津温泉  米沢屋旅館(民宿)

参考にした資料
     西山町ホームページ


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