ガスの中を唐松岳よりガキ谷を滑る。上から佐藤、高尾、田中。

(5/3/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

五龍東面をシラタケ沢より望む。

(5/4/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

快晴のなか五龍山荘よりシラタケ沢を滑る。スキーヤーは田中。

(5/4/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

後立山八峰キレット手前の主稜より剣を望む。雪が大変多い。

(5/5/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

鹿島北壁基部よりキレット沢を望む。これを登って主稜線に出た。

(5/5/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

カクネ里より望む鹿島北壁。基部に向かって登るメンバー

(5/5/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

鹿島よりコヤウラ沢を滑る。左より田中、芝田、佐藤、高尾。

(5/6/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

鹿島山頂よりコヤウラ沢を滑る。下より田中、芝田、高尾。

(5/6/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

針の木山頂からヤマクボ沢を滑る。

(5/7/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

針の木山頂よりヤマクボ沢に飛び込む。

(5/7/2000 写真提供:高尾文雄氏)

 

 

山行報告(WORD版地図)

高尾文雄

期間:2000年5月3日〜7日

メンバー: リーダー−高尾文雄(40)、田中博之(43)、加藤正一(45)芝田之克(46)佐藤文昭(60)

ルート: 八方尾根−唐松岳〜餓鬼谷−白岳−五竜山荘〜シラタケ沢〜カクネ里−キレット沢−八峰キレット−鹿島槍〜コヤウラ沢〜棒小屋沢−種池小屋〜扇沢―針ノ木〜扇沢

l       5月3日 晴れのち曇り

八方池山荘8:30−12:30唐松山荘13:30−唐松岳14:00−14:30唐松山荘−

16:20餓鬼谷二俣

 

昨夜の雨もすっかり上がり、次第に晴れ間が見えて来だした。八方スキー場のゴンドラ前で動き出すのを待った。今年は大変雪が多い。3月に大量の降雪がありそれが残っている。今回のメンバーはいつもの面々に加え熟年のテレマーカーの佐藤さんが参加した。

大勢の登山者と一緒にゴンドラとリフト二本を乗り継ぎ、八方山荘からシールで歩き出す。時々白馬や鑓が見え隠れしたが、思ったほど天気は良くならず、唐松に近づくにつれガスで見えなくなり、風も強くなった。唐松小屋で天気待ちをする。時々ガスが晴れるようになったので、唐松岳を空荷で往復し、餓鬼谷へ滑り込むことにした。

滑り出す頃には再びガスで下は全く見えなくなった。少し下れば視界が得られると思い、磁石と地図だけを頼りに滑る。最初は唐松だけの方へ少し斜滑降し、それから下に向かって滑った。ガスで見えないなかを慎重にターンしながら滑っていくと岩が出てきて行き詰まった。岩の基部に向かって滑ると、岩と雪の間がちょうどクレバスのようにパックリ開いていて、その底を横滑りで降りた。

岩が途切れると急に谷が開けて、次第に視界も効いてきた。そこからはみんな快調に滑り降り、気持ちよく回転できた。二俣に出合ったところにある台地をテント地とした。

l                     5月4日 曇りのち晴れ 強風

餓鬼谷二俣6:35−9:35主稜線−10:20五竜山荘12:50−14:30カクネ里出合−15:00標高1520m

 

 テント地から見上げるとガスのため視界がない。五竜山荘に突き上げる沢はゴルジュ状で左右からのブロックから逃げられないので、少し左俣を戻って白岳に突き上げる広い沢を選んだ。強風で雪面がクラストしてきたのでクトーを使う。ガスで視界がなく迷いそうになったが、うまく白岳に突き上がる沢に入り稜線直下でアイゼンに履き替えた。稜線では縦走の人の列に入ってトレースに沿って五竜山荘まで歩いた。五竜山荘で天気待ちをさせてもらった。

12時半を過ぎると急速に視界が開けてきたので、シラタケ沢に滑り込むことにした。シラタケ沢は上部が大きく開けていて大変気持ちの良い斜面が続く。天気はどんどん良くなり青空が広がってきた。左には遠見尾根を行くたくさんの人を見、右には五龍東面の圧倒的な岩稜を見ながらカクネ里出合まで各人自在に滑りを堪能した。特に佐藤さんのテレマークはかっこ良かったですよ。シールを付けてカクネ里を少し登った平坦な沢の真ん中にテントを張った。強風のため周りにブロックを積んだ。

l                     5月5日 快晴

テント地6:05−7:35キレット沢出合−10:30主稜線−12:10キレット小屋−12:50八峰キレット14:30−16:00標高2700m

 

風も収まり快晴となった。正面には鹿島槍の北壁が間近に見え、大変素晴らしい。数パーティー取り付いているのがよく見えた。我々はスキーで後立山の稜線に上がり鹿島槍を目指すのであるが、どの沢から上がるかがポイントで、みんなで協議した。結局一番奥のキレット沢を選んだ。キレット沢はデブリで埋め尽くされていて、左からのブロック落下が怖い。そこで、素早く、あまり休まずに稜線まで上がることにした。途中からはスキーを担いでキックステップで登った。

稜線からは真っ白な剣が見えた。雪が多いのには驚いた。稜線は人の往来が激しい。スキーを担いでアイゼンを付け、片手にピッケルもう一方にストックを持ち歩き出す。スキーは引っかかって邪魔になるは、兼用靴は歩きにくいはで歩くペースが極端に落ちた。八峰キレットの下りで一ヶ所懸垂下降をした。そのほかは鎖を掘り出したり、後ろ向きになって降りたりと結構苦労の連続であった。

結局時間切れで、鹿島北峰の手前に良いテント地があったので泊まることにした。すぐ横に北壁を登っているパーティーが見える。

l       5月6日 晴れ

テント地6:30−7:10鹿島槍北峰−7:50鹿島槍南峰−9:20棒小屋沢出合10:10−10:30右俣出合−16:00種池小屋−18:30扇沢駅

 

天気は高曇り。今日も鹿島槍までギプスを付けたロボットのような歩き方で登る。一緒になった縦走している人たちを見ていると、なんと易しそうに登るのだろうと感心してしまう。

しかし北峰を越え、本峰に上がりスキーに履き替えればもうこちらのものである。鹿島槍から棒小屋沢までの斜面は今山行のハイライトであった。縦走していた人が我々の急斜面に滑り出すのを見て驚いていたが、斜面は広く雪質も程良いクラストで何も問題はない。みんな気持ちよさそうに滑っている。カービング、テレマーク、ベンディングと色々なスタイルで滑っている。遮るものが何もない大斜面にシュプールが次々刻まれていく。これが山スキーの至福の時である。

斜面は途中から沢に吸収されたが、雪は途切れるとこなく棒小屋沢まで続いていた。棒小屋沢に出合うまで一気に滑り、大休止して沢から水をくんだ。時間があれば棒小屋沢を滑ってどこまで黒部川に近づけるかを知りたかったが、次回の機会とする。

棒小屋沢からシールを付けて登り、右俣に入ると谷がゴルジュ状になり滝のようになっている。滝の手前で右岸の斜面をジグザグに切って尾根まで上がった。尾根は緩やかに種池まで続いていた。

明日の天気が怪しいので今日中に扇沢を滑ることにする。種池からはシュプールがたくさんある。急斜面が続くが、滑ると表面の重い雪の層がゆっくりと雪崩れていく。かまわずどんどん下る。爺より種池寄りに滑った方が斜面は開けていて大きくターンが出来る。急斜面が終わりゆっくりしていると、前方で左岸から大きなブロック崩壊がありビックリさせられた。更に滑っていくと奥小沢の出合でまたビックリ。巨大雪崩の跡があり右から雪面がU字状になって本谷を遮っている。U字の左右の壁は3mほどある。

更に滑って行くと堰堤がでてきた。いよいよ終わりが近い。右岸に道がでてきてそれと辿ると扇沢駅からの自動車道にでた。扇沢駅まで歩いてテントを張った。佐藤、田中はここで別れた。

l       5月7日 晴れのち曇り

扇沢駅6:00−10:50針ノ木岳11:10−12:30扇沢駅

 

昨日残った有志3人(芝田、加藤、高尾)で、大勢のほかの人たちと一緒になって針ノ木雪渓を上がった。スキーを持った人もかなりいたが、シールで登っているのは我々だけであった。針ノ木峠に上がるルートから分かれヤマクボ沢には入り、頂上を目指す。左肩に上がって、シールからツボ足に代えて頂上まで上がった。次第に天気が崩れてきたが、何とかもっている。

頂上からまっすぐヤマクボ沢に滑り込んだ。かなりの急斜面だったが、荷物が軽く雪も最悪ではなかったので、それほど難しくはなかった。各人思い思いの滑り方で降りた。途中で雪が悪くなったが、特に問題にはならず扇沢駅まで滑れた。なかなか良いフィナーレを飾る滑りであった。

以 上